『映画的ムードの世界』
っていう、特集が昔『スクリーン』で連載されていた事があります。
フランス映画、フィルムノワールの映画が取り上げられる事が多かった
ように記憶しておりますが、私はむしろ当時のアメリカ映画に
『映画的ムード』を感じることが多かったのです。
当時、S.マックイーンの『ブリット』という映画がありました。
市街地を舞台にした刑事ものアクションですが、私はこの映画、
サスペンスやアクションよりも『ムード』が最高の一本だと思っています。
この『ムード』をかもし出すために大きな役割を担っているのが、
ラロ・シフリンの音楽。
たとえばこんなシーンがあります。サンフランシスコの郊外の道路を
走っているブリットとジャクリーン・ビセット。陽だまりの中のドライヴ。
言い争い。遠景に川と工業地帯。そこでずっとラロ・シフリンは、
尺八のような音で(おそらくアルゼンチンの吹奏楽器)ヒュル〜 と
ゆったりとしたリズムの音楽を聴かせます。観客はものすごい気だるい
ムードに包まれます。このムードをださせたらラロ・シフリンは天才的です。
他にも『ダーティー・ハリー』、『スパイ大作戦』、『燃えよドラゴン』
などの音楽を書いていますが、カッコいいテーマ曲から、ちょっとした
場面の BGM まで、すべてをジャジーに自分のやりたいように音をブレンド
しています。
最近『ミッション・インポッシブル』がリバイバルされているので、
あのカッコいいテーマ曲が聴けるのはうれしい限りですが、
どうやら劇中の挿入曲はラロ・シフリンの手によるものでは無いようですね。
また、最高の役者、最高の演出で、ラロ・シフリンの音楽が聴きたいです。
(Tsurushima)
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フジサワ夜会的図書委員会 発行、
『読書案内特別号・映画の話をしよう vol.4 』
より抜粋いたしました。
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