『もう彼のことは探さなくてもいい、そう、撃ったのはわたしだ』
元ドイツ空軍の戦闘機乗りが、そう証言したのだそうです。
証言の真偽のほどは未だ明確ではないらしいのですが・・・
1944年 7月 31日、メッサーシュミットBf109 を駆る、
ドイツ空軍の若きエースは、地中海トゥーロンの上空で、
マルセイユ方向に飛行するフランス空軍の P38 ライトニング
を捕捉し、これを撃墜したということなのでした。
『弾は命中し、傷ついた敵機は海へと真っ逆さまに墜ちていった、
操縦士は見えなかった』
その撃墜された P38 ライトニング (これは間違いです、実際は F-5B
という偵察専用の機体で・・・・・とか、えっとー、まあ、いっかあ)
には、フランス本土偵察の任についたサンテックスが搭乗して
いたのでした。
『サン=テグジュペリの作品は大好きだった、彼だと知っていたら
撃たなかっただろう』
なんということでしょう、言葉もありません。
ただ、ただ、かなしい気持ちになりました。
すこし前に、こんな文章を書いたことを思いだしました。
拙文ではございますが、おつきあいくださると嬉しいです。
きまぐれに癇癪をおこしがちな、胸を患った少女のような、
このあやうい愛機を駆って、こころやさしい、命知らずの
荒くれ者どもは、われさきにと群青の大空に飛びたってゆく
夜の闇を飛ぶとき、地表のあかりを、せつないほど恋しく思うくせに、
帰還した地上では、僚友との再会を、おおげさなほどよろこぶくせに、
彼らは、下界にながく、とどまることができない
彼らは、影のおもさを、ひきずることが厭わしい
鳥の眼をもつ哲学者、高速域の詩人、
彼らはおよそ地上の嘘のいっさいがっさいを放擲する
酸素のうすい、遥かな蒼穹を、光速で飛びつづけた、
彼ら飛行機乗りは、永遠に蒼く、若い