『中西文彦』 solo guitar @ sausalito
まだ、開演には少しばかり早い時刻です。
『中西さん、指ならしということで一曲、おねがいできませんか?』
カウンターのあちらから、ジョージさんがいいます。
『えーっと、はい、いいですよ、えー、では、サウンドチェックということで』
カウンターのこちらで楽譜を整理しながら、中西さんがこたえます。
お仕事の都合で、今夜の演奏を聴いてゆかれることができない、
おなじみのお客さま(ピアニストさんです)の残念そうな横顔をみて、
ジョージさんが中西さんにリクエストしたのでした。
『じゃあ、ジョビンの曲をやりましょうか、えーと、" ジェット機のサンバ "』
飛行機が大嫌いな トム・ジョビン
それに乗らなくてはならないときには、おまじないを忘れない
きっと、" 母さん、僕が乗るあの飛行機を支えていてくれ " という
飛行機が大好きな トム・ジョビン
なんやかやと理由をつけては、用事もないのにガレオン空港まで車を走らせ、
永い午後のいっぱいを、それを眺めて過ごすことがお気にいり
そんなふうに、飛行機が大好きで大嫌いだった トム・ジョビン が、
ブラジルの航空会社のコマーシャル・ソングとして書いたのがこの曲です。
『ジェット機のサンバ』
軽快なメロディは、これからはじまる旅への期待と出発の喜びを孕んで、
こんなにも美しいのだろうなあ、と、その題名をふまえて思っていました。
が、違ったのです。
トム・ジョビン の書いた歌詞を読むとよくわかります。
ヒオ・ヂ・ジャネイロに戻ってきたことへの喜びに満ちあふれているのでした。
もし、興味がおありでしたら、ご一読のほどを。
そんなわけで、幸運にもピアニストさんへのリクエストを
おすそわけしていただいて、早い時間からすばらしい演奏を
聴きくことができたのでした、ありがとうございました。
さあ、演奏会のはじまりです!